「HASHI」の名で世界的に知られる写真家、橋村奉臣氏が2024年11月11日、ニューヨークで逝去されました。79歳でした。橋村氏は、液体が動く一瞬を捉える独自の技法「アクション・スティル・ライフ」で、コカ・コーラなど数々の有名ブランドの広告写真を手掛け、アメリカの広告写真界に多大なる貢献を果たしました。その突然の死は、世界中に衝撃と悲しみをもたらしました。本記事では、橋村氏の輝かしい経歴、独自のスタイル、そして悲劇的な最期までを振り返り、その功績を称えます。
若き日の渡米から広告写真界の第一線へ
1945年、大阪府茨木市に生まれた橋村奉臣氏は、1968年にアメリカへ渡り、写真家としてのキャリアをスタートさせました。異国の地で「HASHI」という愛称で呼ばれるようになった彼は、持ち前の才能とたゆまぬ努力で頭角を現し、1974年には自身のスタジオ「HASHIスタジオ」を設立。ニューヨークの広告業界で着実に実績を積み重ねていきます。
革新的な「HASHIスタイル」の誕生
橋村氏の作品を語る上で欠かせないのが、独自の技法「アクション・スティル・ライフ」です。1980年代前半に開発されたこの技法は、2万分の1秒という肉眼では捉えがたい瞬間を捉え、液体の躍動感や飛沫の美しさを鮮やかに表現することを可能にしました。静物写真に動きと生命力を吹き込むこの革新的なスタイルは、「HASHIスタイル」として確立され、広告写真の世界に新風を吹き込みました。
橋村氏は、「人が精魂込めて作り上げたものには生命を感じる」という信念のもと、被写体となる商品の一つひとつに真摯に向き合い、その内面に潜む魂までも写し出すことに尽力しました。単なる商品写真ではなく、見る者の心を揺さぶるドラマチックな物語を紡ぎ出す彼の作品は、多くのクライアントから高い評価を受け、カンパリ、コカ・コーラ、コダック、キヤノン、オリベッティ、アラミス、シティバンク、ジョンソン&ジョンソンなど、名だたるグローバル企業の広告を彩りました。世界の広告代理店200社以上、500社以上の優良企業に作品を提供した実績は、彼の才能と影響力の大きさを物語っています。
光と影の魔術師:HASHIの芸術性
「光と影の魔術師」とも称された橋村氏は、光を巧みに操り、被写体の魅力を最大限に引き出すことに長けていました。例えば、『エスクァイア』誌50周年記念ポスター「喜び — Cheers」は、彼の卓越した光と影の表現力を象徴する代表作の一つです。計算し尽くされたライティングによって生み出される陰影は、見る者に深い感動と静かな喜びをもたらします。
突然の悲劇、そして受け継がれるレガシー
2024年10月22日、橋村氏はニューヨーク・マンハッタンの路上で、突然の悲劇に見舞われました。買い物からの帰宅途中、男に杖を払われ、突き飛ばされて転倒。頭を強く打ち、病院に搬送されましたが、意識不明の状態が約3週間続き、11月11日に息を引き取りました。79歳というあまりにも早すぎる死でした。事件の翌日、警察は30代の白人男性を逮捕。事件の背景や動機については、現在も捜査が続けられています。
橋村氏の突然の死は、写真界にとって大きな損失です。しかし、彼が築き上げた「HASHIスタイル」と、その革新的な写真技法は、後進の写真家たちに多大な影響を与え続け、未来へと受け継がれていくことでしょう。橋村奉臣という一人の写真家の物語は、日本人写真家が世界で活躍できることを証明しただけでなく、写真という芸術の無限の可能性を示す輝かしい軌跡として、永遠に語り継がれることでしょう。
橋村奉臣(HASHI)に関するFAQ
Q. 橋村奉臣とは誰ですか?
A. アメリカの広告写真業界で活躍した日本人写真家です。「HASHI」の名で知られ、液体の動きを捉える独自の技法「アクション・スティル・ライフ」で、コカ・コーラなど多くの有名ブランドの広告写真を手掛けました。
Q. HASHIスタイルとは何ですか?
A. 橋村奉臣氏が確立した写真スタイルで、2万分の1秒という高速シャッターで液体の動きを捉え、静物に生命力と躍動感を与える革新的な技法です。
Q. 橋村奉臣の代表作は何ですか?
A. 『エスクァイア』誌50周年記念ポスター「喜び — Cheers」や、コカ・コーラ、カンパリなどの広告写真が代表作として挙げられます。
Q. 橋村奉臣はどうして亡くなったのですか?
A. 2024年10月22日、ニューヨーク・マンハッタンの路上で男に突き飛ばされ転倒、頭を強く打って病院に搬送されました。その後、約3週間意識不明の状態が続き、11月11日に亡くなりました。